2019年6月定例県議会報告

 6 月定例県議会は6月17日開会し、7月3日までの17日間行われました。今議会には昨年の6月県議会に引き続いて補正予算が提案されず、予算外議案のみの 議案となりました。復旧復興工事の発注がピークを過ぎ、ハード面の整備が進んできたことが影響しています。10年間の集中復興期間の期限が視野に入ってき ていることから、その後の復興のあり方に関する議論、生活の再建などソフト面などを重視していかなければならない時期に来ています。

  議案には今年10月に予定されている8%から10%への消費税率引き上げに関連した 各種使用料および手数料の改定、東日本大震災により被害を受けた者が職業能力開発校、農業大学校および県立学校に入学する際の入学金等の免除期間の延長な どの条例議案、東日本大震災関連の復旧工事等の工事請負契約議案などが提案されました。消費増税は低所得者ほど負担率が大きくなる逆進性が指摘されてきま した。また、社会保障財源に重点配分されると説明されてきましたが、その結果が「老後を30年間生活するためには2000万円必要」というものです。 1989年の3%での消費税導入以来、8%まで税率がアップされてきた一方で大企業が恩恵を受ける法人税減税が進められてきました。税における法人税との バランスや累進性の是正が今こそ必要です。そのような立場から10%への引き上げに私たちは反対しており、今議会での手数料等の引き上げに社民党県議団は 反対しました。

 本会議での一般質問は4日間行われ、16人が登壇しました。不登校・ひきこもりの課 題について複数の議員が取り上げました。宮城県での不登校率が全国的にも上位になっていることからいっそうの施策充実が求められました。外国人労働者が法 律改正によって拡大されようとしていますが、「安い労働力としての認識だけでよいのか」との指摘が複数の議員から提起されました。地域の構成員の一人とし て受け入れられる環境づくりが求められました。この他に県が制定を準備している「種子条例」、警察官および交番の安全確保、女川原発に関する広域避難計画 などが取り上げられました。

 定例県議会最終日の本会議に佐藤光樹議長から辞職願が提出されました。塩釜市長選(9/1投開票)への立候補が理由とみられますが、4年の任期中に5人目の議長という異常事態です。社民党県議団は辞任許可に反対し、新議長の選挙では白紙投票で臨みました。

  意見書は会派間協議で「東日本大震災からの復興を完遂し次なる巨大災害に対応した防災体制の強化を求める意見書」と社民党県議団が提起した「地方財政の充 実・強化を求める意見書」の2件が合意されました。社民党県議団はこの他に「脱原発社会の実現を求める意見書案」を提案しましたが合意に至りませんでし た。


■環境農政水産委員会  熊谷義彦

消費増税条例反対、種子条例(仮)で質疑

 環境農政水産委員会には、2つの条例改正案が出されました。いずれも、10月の消費税増税を想定しての利用料金改訂を求めるものでした。しかしながら、増税分2%以外の金額も含まれていたことから、次の点を質しました。

(1)増税分以外の料金値上げが含まれている
(2)10月増税が見送られた場合の取り扱いはどうするのか
(3)民間に便乗値上げを規制し、行政が便乗値上げをするのはいかがか
(4)今議会提案でなく、参議院選挙が終わった9月議会でもいいのではないか等の質疑を行いました。

  これに対し「県全体として総合的に判断し、来年度値上げの予定を前倒し提案している。便乗値上げではない。2%増税が見送られた場合、施行期日の変更を含 めて再提案になる」との答弁でした。私は、消費増税が便乗値上げを含めて、提案されていることから条例改正に反対しました。

 また、宮城県主要農作物種子条例(仮)案が示されました。7月3日までのパブリック コメントを実施し、9月議会に正式に条例として提案される予定です。国の種子法廃止を受けて、県条例制定を強く迫ってきたことから、一歩前進だと考えては います。問題は内容であり、これからの宮城県農政上、誤りのない条例をつくるために、努力します。是非、御意見を賜りますように御願いします。

 その他、東京電力福島事故問題、産業廃棄物税問題等々が質疑されました。


■文教警察委員会  岸田清実 

  文教警察に関係する議案の審議が7月2日に行われ、私は第127号議案財産の取得を取り上げました。この議案は高等学校などへのタブレット端末等の配備を 行うもので、4年間でタブレット3000台、映像を映し出せる黒板とプロジェクター2000台を購入します。タブレットは全教職員に行き渡る台数ではない ため、配備後の活用に課題がないかとの評価が必要だと指摘しました。

 3 日には各種所管事項の審議が行われ、私はみやぎ心のケアセンターが実施してきた「みちのく子どもコホート」の2018年調査分報告を取り上げました。この 調査は宮城県、岩手県、福島県の3県共同調査で、東日本大震災後に生まれた子どもを対象に震災の影響を2016年から10年間追跡調査しようというもので す。宮城県ではみやぎ心のケアセンターが担当し、6月に2018年調査の速報がまとまったことから同センターを訪問して説明を受けていました。速報では 2016年、2017年調査との比較が行われ、「この2年間で子どもの行動面での課題が改善していると断言することは難しい」「震災から7年 を経た時点でも、被災地で生活する保護者のメンタルヘルスは課題があり、子どもだけではなく保護者を含めた包括的支援の必要性が改めて確認された」と報告 されています。私はこれを元に「今後この課題は小中学校での問題につながっていく。家庭を含めた支援のために福祉サイドとの連携が必要ではないか」と指摘 しました。

 次に不登校児童・生徒が自宅でICTなどを生かして学習した際に出席と認めたり評価に反映したりできるとする制度について質疑しました。文部科学省は2002年にこれを認める通知を出し、2016年、2018年 に改めて「積極的な対応」を求める通知を出しています。この制度の宮城県での運用実態を質したところ宮城県での実績は無いとのことでした。私は「不登校の 子どもたちへのサポートは様々な選択肢が必要で、本制度もその一つ。少なくとも制度の周知をしっかり行うべき」と指摘しました。

 


意見書

東日本大震災からの復興を完遂し

次なる巨大災害に対応した防災体制の強化を求める意見書

 

我が国に未曽有の被害をもたらした東日本大震災の発生から八年三カ月が経過し、復興・創生期間の終了まで、残すところ一年八カ月余りとなった。

これまで、復興庁は、東日本大震災からの復興を担う中核として、被災自治体等と連携し ながら、被災者に寄り添った復興と被災地の再生に取り組んできたところであるが、被害は余りにも大きく、被災者の心の復興やなりわいの再生等、今後も復興 の完遂に向けて、長期的かつ継続的な対応が必要不可欠となっている。

こうした中で、政府においては、今年三月、被災地の要望等を踏まえ、必要な復興支援施策を十年という年限にとらわれず確実に実施できるよう、復興庁の後継組織設置を明確化する方針を決定した。

一方で近年は、地球規模で森林や耕地の喪失、砂漠化の進行、海岸の侵食、温暖化の進行など、自然環境が大きく変化し、集中豪雨、豪雪、巨大台風及びハリケーンの発生、海面の上昇に伴う高潮被害等、大規模な自然災害が頻発している。

さらに、我が国においては、南海トラフ地震や首都直下地震など、巨大地震が発生するリスクが年々増大していることに加えて、少子高齢化の進展に伴う共助型地域コミュニティーの衰退等が、災害に対して脆弱な社会環境を作り出している。

今後想定される大規模災害に対応していくためには、東日本大震災等の経験や教訓等を最大限生かしつつ、国全体で防災社会の基盤整備と強化を進める必要がある。

よって、国においては、次なる災害に備えて、また東日本大震災からの復興の完遂に向けて、次の措置を講ずるよう強く要望する。

 

一 復興庁が蓄積した情報や経験を生かし、巨大災害に備え国の指揮命令系統を明確化し、調整権限や予算措置権限等も含めて、災害への備えから復旧・復興までを担う「防災復興庁(仮称)」を創設し、常設化すること。

二 東日本大震災からの復興の完遂に向け、ハード及びソフトの両面で、被災自治体において継続的に復興に取り組むことができる財政支援制度等を創設すること。

 

地方財政の充実・強化を求める意見書

 

地方自治体は、子育て支援策の充実と保育人材の確保、高齢化の進行に伴う医療・介護な どの社会保障への対応、地域交通の維持など、果たすべき役割が拡大する中で、人口減少対策を含む地方版総合戦略の実行やマイナンバー制度への対応、大規模 災害を想定した防災・減災事業の実施など、新たな政策課題に直面している。

 一方、地方公務員を初めとした公的サービスを担う人材が限られている中で、新たなニーズへの対応と細やかな公的サービスの提供が困難となっており、人材確保を進めるとともに、これに見合う地方財政の確立を目指す必要がある。

 政府は、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一八」において、「地方の安定的な財政 運営に必要となる一般財源の総額について、二〇一八年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」としているほか、平成三十一年度地 方財政計画において、一般財政総額は六十二兆七千七十二億円(前年比一・〇%増)となり過去最高水準となった。

 しかし、一般財源総額の増額分も、保育の無償化などの国の政策に対応する財源を確保した結果であり、社会保障費関連を初めとする地方の財政需要に対応するためには、さらなる地方財政の充実・強化が求められている。

 よって、国においては、令和二年度の予算と地方財政の検討に当たり、歳入・歳出を的確に見積もり、人的サービスとしての社会保障予算の充実及び地方財政の確立を図るため、次の措置を講ずるよう強く要望する。

 

一 社会保障、災害対策、環境対策、地域交通対策、人口減少対策など、増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し、これに見合う地方一般財政総額の確保を図ること。

二 子ども・子育て支援新制度、地域医療の確保、地域包括ケアシステムの構築、生活困窮者自立支援、介護保険制度や国民健康保険制度の見直しなど、急増する社会保障ニーズの対応と人材を確保するための社会保障予算の確保及び地方財政措置を的確に行うこと。

三 平成三十一年度予算のうち、「まち・ひと・しごと創生事業費」として確保されている一兆円について、令和二年度予算においても、引き続き同規模の財源確保を図ること。

四 令和二年度から始まる会計年度任用職員の処遇改善のための財源確保を図ること。

五 森林環境譲与税の譲与基準については、自治体と協議を進め、林業が盛んな自治体への譲与額を増大させるよう見直しを進めること。

六 地域間の財源偏在性の是正のため、偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から 地方税への税源移譲を行うなど、抜本的な解決策の協議を進めること。同時に、各種税制の廃止、減税を検討する際には、地方自治体財政に与える影響を十分検 証した上で、代替財源の確保を初め、財政運営に支障が生じることがないよう対応を図ること。

七 地方交付税の財源補償機能・財政調整機能の強化を図り、市町村合併の算定特例の終了を踏まえた新たな財政需要の把握、小規模自治体に配慮した段階補正の強化などの対策を講ずること。

八 地方自治体の基金残高を、地方財政計画や地方交付税に反映させないこと。



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