厚生労働省所管の「雇用・能力開発機構」が運営する関東職業能力開発大学校水戸短期校(水戸市水府町)が今年三月で廃校になる。同機構は全国の勤労者施設投売りで強い批判を浴びているが、この水戸短期校についても、廃校の方針が決定した後で四億円弱の費用をかけて建設されたばかりの学生寮もあり、水戸市民からは「なぜこんな無駄遣いをするのか」と疑問の声が上がっている。

 この正月、同校周辺の住民に「水戸短期校実習場等取壊しその他工事のお知らせ」と題する文書が配布された。それによれば、短期校の三月末廃止に伴い、敷地を借りていた茨城県に更地返還する必要があるので、二期の予定で校舎等を解体・取壊しするというものであった。

施主は雇用能力開発機構、工事監理は葛ウ育施設研究所、施工は地元工務店という文書を受け取った近隣住民からは、「勤労者の財産である雇用保険を使った挙句、取り壊しとは許せない」、「せめて体育館やテニスコートなど地元住民が有効活用できるようすべきではないか」と電話や投書が社民党市議団へ寄せられた。

短期校は約二万九千平米の県有地に校舎や体育館など15棟が建つ。97年に旧労働省が全国26の短期校を職業能力開発大学校などに再編成する方針を出し、水戸の短期校原子力科は廃止、生産技術科や建築科は小山市の大学校へ統合との結論が出された。併設されていた茨城職業能力開発促進センターも、昨年10月に水海道市へ新築・移転となった。

ところが、98年には真っ白な外観でマンション風の学生寮が完成した。建設費は三億八千五百万円。この寮建設は廃校方針以前に計画されたものであったため、見直されることなく建設されたのである。これまで同校施設整備にかかった費用は、総額29億円。廃校にあたり、機構側が地権者である県に交渉したが、再利用策が見つからなかった。また、地元の水戸市には特に相談もなかった模様だ。

 
本来、外郭団体は専門性を生かして、行政が行う以上のサービスを提供し、採算を満たすはずであった。その役割を果たせないどころか、勤労者の雇用保険を食いものにしている同機構は、少なくとも厳しい外部監査に基づいた説明責任を果たすべきではないだろうか。