福島第一原発視察

2013年5月22日 広野町 J ビレッジ〜大熊町福島第一原発

 去る5月22日、社民党福島県連合は、かねてより要望の強かった現地視察を社民党吉川元国会議員をはじめ総支部対策委員など総勢40名で、事故収束がままならぬ東京電力第1原発敷地内・事故現場を視察した。

  原発視察は、当初予定した視察希望日に難色を示した東京電力が、我々の再度の視察要請に、一定の規制(カメラ・携帯持込禁止・人数の制限)を条件に実現したものである。

  視察にあたり、氏名・所属・性別・国籍・生年月日・住所・電話番号・身長・靴、作業服のサイズ・メガネ着の有無・本人確認証・乗用車種の提出が求められた。

  集合場所のJヴィレッジでは、予め視察駐車場の確保と案内係り、集合部屋(チームサロン1,2)が準備してあり、本人確認の上、線量計・入構証が渡された。そして、氏名と防護装置着用品のある椅子に着席し、責任者から視察スケジュール及び汚染水など概要の説明を受けた。

  東京電力は、原子炉が安定的に冷温停止状態に維持されていることを強調した。汚染水の処理状況、敷地境界内の放射線量の低減、海洋汚染拡大防止、使用済み燃料プールの冷却と燃料の取り出し、各プラントの状況把握などの説明を受けた。

  その後、防護品着用の指示を仰ぎ、入構証を首掛け、線量計を内ポケットに入れた。靴カバー、綿手袋の上にビニール手袋を被せ、サージカルマスクを着移動、Jヴィリッジ玄関前に東京電力が準備した視察用大型バスに乗り込んだ。途中、何人もの作業員と行き交うが、視察慣れか、無関心を装っていた。

  バスに乗った直前に視察案内責任者が、カメラ、携帯持参禁止など神経過敏なほど目を光らせていた。東電は運転手も含めて7人が乗り込み、説明員の外に高度な専用線量計を扱う者及ぶ説明補助を担っていた。線量は、楢葉―富岡―大熊と近づくにつれて高くなり、6号線から東電専用道路に向う信号機付近で60μSを超えた。

  敷地内では、まず免振重要棟に案内され、前面マスクや白いタイべックを着た多くの作業員を尻目に隔離された部屋で改めて責任者から構内案内の説明があり、その後、構内バスに乗り換えて、原子炉注水ポンプ・処理水貯蔵タンク・多核種除去設備・1〜4号機外観・非常用ディーゼル発電機・鉄塔倒壊現場などを視察した。

  とりわけ驚愕したのは、南湾内側4〜1号機に向って240、500、600、最大値1420μSに一挙に計測器が示した瞬間である。なぜか東電説明員は、1.42Sと知らせた。ところ狭しと立ち並ぶ汚染水タンクの側も高く60〜100μSを超えていた。1日400t増の汚染水処理や無尽蔵に並ぶ配管、嵩上げした土嚢、そして無残な原発事故現場は、東電説明と乖離していると見えた。

  帰りのバスでは質問が多く出された。@地下水の処理問題 A施設内の放射線量と放射能核種の検出 B汚染水の量と今後の見通し C使用済み核燃料プールの危険性 C事故時のベント作業 D収束作業員の数と放射線管理 Eその他、東電説明員の対応に不解明なことも多く、視察者の怒りをかう場面もあったが、後日丁寧な説明を求めることとした。

  視察を終えJヴィレッチに到着すると、サーべーを受け着替え、線量計・入構証を返却して、線量通知を受けたところ、それぞれ13〜19μSであった。社民党が企画して初めて試みた原発事故現場視察、実態を目の当りにした感想は、それぞれ参加者に委ねるとしても、垣間見た視察であっても実感できた意義は大きいと考える。

  その後、応え切れなかった質問と併せて、再質問を東京電力に要請、東京電力は、膨大な資料とともに、写真を持参の上、社民党福島県連を訪れた。なお送られてきた資料は、信頼できる研究者の解析、評価に委ねることとした。なお今視察の感想及び課題を整理し、直近の参議院選挙政策並びに政府及び県交渉、議会活動など今後の活動に活かすこととした。



視察写真集

J ビレッジ以外の写真は東電提供、カメラ携帯電話は持ち込み禁止。 テロ対策だというが
これまで米国の9.11テロ以来アメリカから要請されていた対策は(B5b)何一つ手付かず
のまま大震災に至った。 B5bを適用していれば補助電源の確保など重大事故に対する備えが
かなりの程度に整えられたはずである。 いまさらテロ対策などとはバカにするにも程がある
というものだ。 いまだに抜けない隠蔽体質は今後の廃炉作業をも危ういものにしかねない。

J ビレッジでの東電からの説明をうける。
外の放射線量は0.7μSV/hほどだが視察バスに
乗ると2μSV/hに跳ね上がった。 バスが汚染されて
いるらしい。
えんどう陽子さんも参加
中央本部から吉川はじめ衆議院議員他増田・野崎参加 マスクビニル手袋・足袋等を装着して原発へ
線量計は大熊町に近づくにつれ振り切れに
三角屋:9μSV/h 6号線原発入り口:21.9μSV/h
免震棟に入って視察の原発の現状など説明を受ける
この建物は重装備した作業員が多数出入りしている
再度手袋・足袋を装着しなおしていよいよ原子炉へ
構内は線量計は振り切れて警報が鳴るばかり
この新しい建物は建設中の多核種除去装置 ドラム缶を横に並べたような乾式キャスク
(放射性汚染物仮保管設備)
滞留水処理施設 大量の使用済み燃料が宙吊りになっている
問題の4号機、この大きなアングルが完成間近の
燃料取り出し用クレーンを取り付けるものだ
最も激しく爆発した3号機付近 遠隔操作のクレーンで
作業中だ。 バスの中でも50μSV/hくらい。
テントで覆われた1,2号機と思われる
左から1,2,3号機 3号機の海側では最高の
1420μSV/hを記録。 バスからでこの線量なので
建屋の中に入っての作業などは不可能
持参した党所有の線量計はフルスケールで30μSV/h
なので振り切れの連続だ。
爆発で壊れた4号機建屋の壁、右上に新設された
アングルが見える。 4号機は建物の傾斜を測定
しながら監視している危険な建物だ。
全電源喪失(ブラックアウト)の一因となった外部電源
送電線鉄塔の倒壊現場。 重要な設備が一系統のみ
しかも耐震強度は一般の建造物と同じだ。 どんなに
原子炉本体を丈夫にしても設備全体の耐震強度は一般
建造物と同じことになる。